ゲーム解説
開幕戦勝利! 全員フットボールで魂の大逆転劇!'06シーズンの開幕戦。対戦相手は明治学院大学。近年はもちろん、過去においても公式戦での対戦は皆無に等しい相手ではないだろうか? そんな初顔合わせの不安もあったが、勝つことを強く意識して夏場は猛練習に励んできた。 明学大オフェンスはワンセットバック。WRを左右に散りばめパスを投げ分けるスタイルだが、ライン戦での優位性を考慮してか、この日は2バック体型も春より多めに使用していたように思う。そして、ディフェンスは43。ブリッツ、スラントと多彩なムーブメントで攻撃的な守備を展開してくる。 前半戦前半戦はライン戦での勝ち負けがはっきりと表れる展開となってしまった。PRIMROSE(プリムローズ)はTB小松(#80・3年生・OLB兼任)、佐藤(#29・2年生・DB兼任)のラン、KR佐藤(#29)のキックオフリターンのロングゲインなどで二度にわたり明学大陣内2ヤードまで攻め込んだ。しかし、そこからのゴールライン・オフェンスを明学大ディフェンス陣の鋭い突進にことごとくシャットアウトされ、エンドゾーンに体をねじ込むことが出来ない状況が続いた。 一方のPRIMROSEディフェンス陣も明学大の大胆なパスワークに苦しみ、パント時のスナップミス等、陣地的な優位性も与えた結果、2TDを謙譲し序盤で3対14とリードを広げられた。 しかし、前半終了間際、PRIMROSEにチャンスが訪れる。明学大が自陣深いところでパントのスナップミスを犯し、三たびPRIMROSEは相手ゴール前1ヤードからの攻撃権を獲得する。1stダウンはTB佐藤の中央。しかし、ここでも明学大DLの猛チャージに1ヤードのロス。嫌な雰囲気になったが2ndダウンでQB吉田(4年生・#23)が魅せる。ウィークサイドへのキープ・プレーで相手DLにタックルを受けながらも、倒れ込みざまにTB小松へボールをピッチ。究極のタイミングでピッチを受けたTB小松はノータッチでエンドゾーンへ侵入。苦しい苦しい道のりだったが、三度目の正直でようやくTDを奪った(前半終了10対14)。 後半戦3Qに入ると、前半のライン戦での劣勢がより顕著になり始める。後半最初の明学大のシリーズは明学大陣内27ヤードから。明学大はランとパスをバランス良く配合させ、リズム良くPRIMROSE陣内へと侵入する。ここから明学大はパスを選択。ターゲットを見つけられないでいた明学大QBが一瞬スクランブルの態勢に入る。その動きに合わせてPRIMROSEのCB佐藤(#29)の動きも一瞬止まった。その隙を逃さなかった相手QBが佐藤の後ろに33ヤードのロングパスをヒットさせる。一瞬にしてエンドゾーンを背にしたPRIMROSEディフェンスだったが、立て直す暇もないまま立て続けに12ヤードのTDパスをヒットされ、10対21と更にリードを広げられてしまう。 4Qに入っても明学大は攻撃の手を緩めない。ランプレーの配分も多くなり、明らかにボールコントロールを意識してきた。4Q序盤。明学大に手堅くFGを決められた時点で得点は10対24。PRIMROSEにとっては非常に厳しい状況となった。残り時間6分少々。しかし、ここからドラマが起こる・・。 1つ目のドラマはWR高橋(#15・2年生・OLB兼任)。たったの1プレーの出来事。中央のランフェイクからのプレーアクションパス。CBとのマンパワー勝負に競り勝った高橋は堅実にボールをキャッチ。最後は相手SFとの追いかけっこに競り勝ち73ヤードの独走TDラン。ラン比率が高かった中で、前のめりになった明学大守備を一瞬にして置き去りにした。この日、高橋にはこの1球しかボールが来ていない(ほとんどパスがなかったからだが・・)。その1球をものにし、仕留めた高橋は『エース』と呼ぶにふさわしい活躍をした(17対24)。 2つ目のドラマはQB吉田。同点への望みをつなぐドライブ。敵陣7ヤードまで迫ったところで4thダウン・・。前半戦のゴールライン・オフェンスを考えるとランプレーでのTDは辛どい状況に追い込まれた。PRIMROSEはここでWRを増やしてのパスを選択。明学大は早い潰しを狙って大外からブリッツを2枚入れてきた。QB吉田はそのブリッツをかわしてカップの外に飛び出すと、そのまま大外を走りきってTD。『QBをやってみたいです』。と2年生の時に頼もしく言ったあの吉田が、本当に頼もしく見えた瞬間だった(24対24)。 3つ目のドラマはK金子(#54・2年生・OL/LB兼任)。逆転をかけたドライブ。TB佐藤の決死のドローが24ヤードゲインし敵陣に入る。その後も粘り強く前進しギリギリのFG(フィールドゴール)圏内に突入したところで残り時間は20秒台だったか・・。4thダウン38ヤードのFGトライ。この場面、緊張しないわけがない。距離的にも簡単ではない。しかし、金子を中心にチームはまとまっていた。みんなの思いを乗せたボールはゴールポストの間を見事に通過。27対24でPRIMROSEは開幕戦大逆転勝利を飾った。 総括開幕戦勝利おめでとう! ここに来て裏話になってしまうが、『2つ目のドラマ』QB吉田のスクランブルのドライブは明学大のファンブルから攻撃権を得た。そのファンブルは明学大の控えのQBがしたものである。なぜ控えのQBが出場していたのか? 勝ちが決まっていたからではない。正QBのユニホームの袖が破けていたからである。たったの1プレーだけ(着替えるために)正QBが外に出ていたのである。そのたったの1プレーで控えのQBがファンブルをしたのである。フットボールには神様が存在する。 ちなみに、袖を破く炎のタックルをしたのはDL松澤(#51・2年生・OL兼任)であるが、相手QBが本当に着替えるために外に出ていたのかは確認を取ったわけではないので、あくまで推測である。 次節は優勝候補の駒澤大。この勝ちを生かして次も良い試合をして欲しい。 (文:17期 丹野) BACK |