ゲーム解説

1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
埼玉大学 7 0 0 0 7
上智大学 0 0 0 7 7

可能性0の戦い。ドローに終わる。

'07シーズンの最終戦。対戦相手は上智大学。前節、千葉大が破竹の連勝で同校を撃破して優勝を決めたため、この試合はお互いにとって消化試合となってしまった。何を賭けて戦うのか…、この苦しい心理状況を両チームは何をもって埋めたのであろうか…。それぞれの思いを胸に、この優勝可能性0(ゼロ)の戦いに挑むのであった。

上智大オフェンスはワンセットバック。3部リーグでははっきり言って皆無に等しいオフェンススタイル。明らかなパッシングチームで、これでもかと言うほど投げてくる。確かに捕球能力は高い。しかし、ずば抜けて早いレシーバーがいるわけではない。手強い相手であることは確かだが、勝機が皆無であるという考えはなかった。そして、ディフェンスは43。しかし、この日はランの多い我が校に対し8メン(44)も多用してきた。


前半戦


両チーム共にファンブル等でなかなか波に乗れない中、先制したのはPRIMROSE(プリムローズ)だった。TB佐藤(#29・3年生)のランに加え、この日はQBとして随時出場した崎本(#18・2年生・DB兼任)が要所で小刻みにゲインしてオフェンスのボールコントロールに貢献した。1Q終盤にはようやく上智大陣内34ヤードまで攻め込み、最初の得点機会が訪れる。ここでTB佐藤のオープンランのフェイクからWR福田(#31・2年生・DB兼任)にトリック・プレーのパスをヒットしてTDを奪う(キック成功で7対0)。相手の力量、そして何よりもライン戦での不利を考えると、ランが出ているうちに先制できたのは大きかった。

この日のTB佐藤はTDこそなかったが、30回以上キャリーして100ヤード以上のヤードを稼ぎ出し、QB崎本も10回のキャリーで50ヤード以上と、PRIMROSEの獲得ヤードの大半を稼ぎ出すと共に、PRIMROSEオフェンスの真骨頂でもあるボールコントロールに大きく貢献した。しかし、QBとして初陣の崎本はファンブルや反則を犯した回数も多く、一歩間違えれば試合が崩壊していた可能性もあった。崎本にとっては大いなる課題も残った試合と言える。


後半戦


後半戦に入ると、PRIMROSEオフェンスのランが止まり始める。もともとライン戦では負けている。少々の劣勢は予想していたが、徐々にディフェンスにも負担がのしかかってきた。

3Q終盤、上智大オフェンスは自陣24ヤードからの攻撃。ランで小刻みにハーフウェイまで前進すると、ここからパスを3連続でヒットして一気に38ヤードゲインする。最後はTBが中央のランで5ヤードをねじ込んでTDを奪う(キック成功で7対7)。この時点で4Qに入っており、単純な力の差を考えれば、ここまでで7失点というのは上出来とも言える展開ではあった。しかし、前節の千葉大戦でPRIMROSEディフェンスは失点後に集中力を切らせ、崩れ落ちてしまったという経緯がある。今日もズルズルやられてしまうのか・・・。不安が過ぎる中、4年生がその不安を吹き飛ばしてくれた。

4Q終盤にはロングゲインを狙った上智大のパスをLB中山(#7・4年生・TE兼任)がインターセプトに仕留め、オフェンスに上智大陣内44ヤードからの攻撃権を供給する。ここでPRIMROSEオフェンスはTB佐藤にボールを集め敵陣35ヤードまで前進した時点で4thダウン1ヤード。FGを狙うには少し厳しいこの場面でPRIMROSEオフェンスはギャンブルを選択…。

QBはいつでもリーダーシップを発揮しなければならない。QBは常に冷静でなくてはならない。皆の1年間の練習を一つのファンブルやインターセプトで台無しにしてしまうかもしれない。俺(筆者)はコーチとしてQBには特に厳しく接してきた。ターンオーバーをすれば激怒を喰らわせ、理屈に合わないコースに放ればまた更に激怒を喰らわせた。4年生QBの松原にも例外なく厳しくした。3年生の時まではスクリメージにすら殆ど入れなかった。それはやはり松原に甘さが見えていたからであり、このまま4年生にしてはならないという強い危機感がコーチである俺の中にあったからだ。しかし、松原は4年生であるこの1年間はようチームを引っ張った。下級生にも厳しく接し、嫌われ役に徹していたようにも見えた。

この4thダウンはQB松原の判断が試されるプレーだった。ここで松原は自らのキープで15ヤードをゲインし1stダウンの更新に成功した。残り時間10秒の時点で敵陣20ヤードからのFGトライ(合計37ヤードのFG)を演出し、松原は4年間の締めくくりで逆転をかけるザ・ドライブをやってのけた。


総括


惜しくもFGは失敗に終わった。勝つことは出来なかった。しかし、4年生は可能性ゼロのこの戦いに最後まで全力で取り組み、0パーセントの可能性に意味を持たすことに成功したのではないだろうか。試合終了のホイッスルと同時に下級生の心の中では何かが開始されたように思う。『ザ・ドライブ』はまだ終わっていないのである。

3年生以下はこの燃え始めた火を決して絶やしてはならない。千葉大戦の敗北、上智大との0パーセントの戦い、全ての悔しさを飛躍するための材料にしなければならない。

来季こそ必ず…。

(文:17期 丹野)

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