主将 山田雄志
シーズン当初から主将としての挨拶の機会があるたび「今年は2部昇格する」と言ってきた。自信があるわけではなかった。去年1位だった駒沢大との差は明らかだったし、相変わらず人数も少なかった。去年2位だったというだけで、2部昇格を果たせるような要素などほとんどなかった。それでも2部昇格すると言い続けたのは、チームの意識を変えたかったからだった。去年までのチームは、2部は遠い存在で、チームとしての明確な目標がないように感じていた。とりあえず3部残留できればいいといった雰囲気さえあった。まずはそれを変えたかった。
新チームが始動してから最初に取り組まなければならなかった事は、いかに新入生を獲得するかということだった。ここ10年ほど勧誘は失敗し続けていると聞いていた。人数不足はチーム最大の問題だった。今年は準備段階から様々なことを行った。新しい看板の作成を依頼し、チーム統一のウェアも作った。ただそれだけで成功するほど勧誘は甘くないということもわかっていた。一番大事なのは、どれだけ本気で新入生に声をかけ続けることができるかということだった。事実、去年までの勧誘はそこまで本気で声をかけ続けることはしていなかった。今年はそこの改善にも取り組んだ。新入生の多くいる授業を調べ、朝から晩まで勧誘し続けた。皆に勧誘の大切さを伝え、モチベーションを維持させるようにした。1年生はマネージャーを含め23人入部した。大成功だった。この時点ではチームは順調に2部昇格へ向かっているように思えた。
春シーズンは色々な大学と試合をする機会があった。しかし2部昇格を目指すチームとしては満足のいく結果を残すことはできなかった。たくさんの1年生を迎えての練習はまとめあげるのに苦労した。そして人数が多い1年生に対し、一人ひとりきちんと面倒を見ることができてなかったように思う。夏合宿が終わるころには1年生は17人に減っていた。
秋シーズン初戦を間近に控えた時期、怪我人が続出した。上級生の少ないチームにとって、上級生の怪我は致命的だった。それでも独協、千葉商には勝つことができた。次の相手は千葉だった。このころ怪我人も少しずつ回復し始め、チーム力は上がっているように思えた。千葉には去年勝っていた。かといって今年も同じように勝てるような相手ではないことはわかっていた。しかし2週間の練習で挑戦者になりきることができなかった。チームを挑戦者になりきらせることができなかった。結果負けた。2部昇格は大きく遠のいた。それでも2部昇格の可能性は少ないながらもあった。あきらめるわけにはいかなかった。コーチたちは思い切った上智対策を選手達に示すことで、夢のような状態になってしまった2部昇格を現実的なところまで持ってきてくれた。本気で2部昇格してやると思った。これで2部に行けたらなかなかいい話になるなとか思っていた。しかし現実は冷酷だった。千葉が上智に勝った。そして2部昇格の可能性が消えた。その結果を聞いたとき、くやしくて涙が溢れてきた。なんで泣くのか。2部昇格なんて半分冗談で言っていただけではなかったのか・・・。いつの間にか2部昇格は自分の中で絶対に成し遂げなければならない、絶対に譲れないものになっていた。それから上智戦までの2週間、後輩のためだとか最後は勝って終わらなきゃだとか自分に言い聞かせたが、以前のように自分を奮い立たせることはできなかった。ただそれは周りには見せないようにした。
上智戦は引き分けだった。まったく想像していなかった結末だったが、勝っていたら満足してしまいそうだったし、負けていたらずっと引きずってしまいそうだった。
この1年、何度も丹野さんに怒られた。何度も監督に迷惑をかけた。何度も大沢さんと細田さんに飯を食べさせてもらった。結局プレーでチームを引っ張ることはできなかった。最後の最後まで足をつり、チームに迷惑をかけた。満足できるプレーなどほとんどなかった。そんな自分が今年唯一胸を張って成果を報告できること、それは勧誘を成功させたことだ。シーズン当初監督は「30人以上にして、2部昇格」とおっしゃっていた。2部に昇格することはできなかったが、30人以上にすることはできた。そして今年の1年生には色々と面倒なこともやらせてきたが、それでも17人の1年生はついてきてくれた。人数の多い1年生はチームに活気を与えてくれてとても楽しかった。この人数の多い1年生達が来年以降上級生になったとき、PRIMROSEの新しい歴史を作ってくれることを期待しています。だからもうこれ以上辞めるなよ。